燃料系について


燃料系(主にガソリン)にトラブルを抱えると、始動性が悪くなるだけでなく、走行不能になります。一番代表的なところでガス欠です。「ガス欠なんて・・・」と、思われるかもしれませんが、ここでいうガス欠とは、タンクの中にガソリンが無い状態だけでなく、もっと広い意味での”ガス欠”です。それと、ガソリンが通常より多く流れだした時のトラブルです。


1.  燃料の流れ


一般的に燃料の流れは、 タンク→燃料コック→ホース→(燃料フィルター)→(燃料ポンプ)→キャブレター(もしくはインジェクション)→エンジン  となります。この流れの中でどこか一つでもトラブルと、全体に響きます。

a. タンク・・・錆、水の発生、圧抜き不良。

b. コック・・・ゴミによるつまり、ガスケットやゴムのパッキン不良、切り替えミス、
        (負圧ホースの不良)。

c. フィルター・・・ゴミによるつまり、取付方向の不良。

d. ポンプ・・・作動不良。

e. キャブレター・・・ジェット(ガソリン、空気の通る通路)のつまり、または取り付け不良、
            各パーツの作動不良、(電気系のトラブル)。

f. エンジン(シリンダー)・・・圧縮不良。

上記の内容は、各ポジションによる、考えられるトラブル・シューティングですが、細かく書くとまだまだあります。また、単体だけのトラブルだけでなく、上記の項目が複合して起きてしまう時もありますので厄介です。一般的にどんな修理にとりかかる時にもいえることですが、メカニックの人間は、あらゆる原因を初めに想定して修理にとりかかります。原因があってのトラブルですので、その原因を直さなくてはいけないからです。つまり、燃料系のトラブル一つだけでも時間と手間がかかります。


2.  燃料タンク


何年もたったバイクの燃料タンクからガソリンを抜いて掃除をすると、錆や水が出てくることがあります。これはタンク内の空気が冷やされた際に、タンク内で結露になって水が発生したり、あるいは、タンクのふたの裏側にあるゴム・パッキンの不でタンクに水が入り、それが原因で錆が発生する為です。結露は気温の上下が激しく、湿気が多い時に起こりやすいので、冬場だけでなく、梅雨や夏場も油断できません。定期的にタンクの点検もお勧めします。症状としては、エンジンがかからない、アイドリングが安定しない、吹け上がらないといろいろです。また錆は、キャブレターまで流れてしまうと、オーバー・フロー(ガソリンがエンジンに行き過ぎる、あふれる)の原因となり、放っておくと、大変なことになります。燃料コックをリザーブの位置にまわして、先程の症状が出てしまった場合は、タンクの底にたまっている水、錆、をキャブレターが吸ってしまった可能性がありますので、特に要注意です。長期保管される方はタンク内を掃除した後、ガソリンを満タン(なるべく、空気の入る場所を減らす)にして、保管してください。


3.  燃料コック


ガソリンが少なくなると、予備コック(リザーブ)に切り替える前にスタンドで給油される方がほとんどでしょうが、どうしようもなく、予備コックに切り替える時もあると思います。この予備コックに切り替えるタイミングが、以外と難しかったりします。不意にガス欠に見合われた時、それを燃料タンクからのガス欠の信号と即座に判断できるでしょうか?タンクのふたを開け、揺さぶってみて、「ちゃぷ、ちゃぷ」と、音がしたから大丈夫!とか、いつも満タンで○○Kmくらい走るから、まだ大丈夫!とか・・・。そんな時に限って、コックを予備コックに切り替えたら、一発始動!ってこともあります。エンジンが止まったら、まず燃料コックを予備コックに切り替えてみましょう。


4.  キャブレター


キャブレターは精密パーツの一つです。ここでは、キャブレターのトラブルの一つである、オーバー・フローについて説明させていただきます。キャブレターは空気とガソリンをミックスする場所ですが、燃料タンクから流れてきたガソリンを一定量貯めておこうとします。この”一定量”以上ガソリンが流れ込まないよう、調整する部品がついているのですが、その部品の劣化や、錆などによるゴミのせいで調整できなくなってしまった時に、ガソリンがあふれ出す症状をオーバー・フローといいます。あふれだしたガソリンは、あらゆる場所へ流れこみます。エンジンの中、エアー・クリーナーBOXなどです。修理はキャブレターの分解・掃除、ガソリンが混じったエンジン・オイルの交換、錆の発生場所と考えられるタンク内の掃除、ゴミをとるフィルターの取付、とかなりの出費を伴うケースがほとんどです。オーバー・フローを予測するのは大変難しいですが、タンクを掃除する、エアーエレメントの管理、燃料ホースにフィルターを取り付けるなどで、ある程度予防はできます。ちなみに、転倒してキャブレターからガソリンが漏れることも、オーバー・フローといいます。この時はなかなかエンジンの再始動が困難ですが、あわてず、チョークを引かずにアクセルを開けて、セルボタンを押し続けてください。一次的に液状のガソリンをかぶってしまったプラグが、復活しだい始動できるようになります。